時は寿永、民に巨悪の限りをつくした東尋坊という名の怪力の悪僧。在所の美しい姫君に心を奪われた東尋坊は、恋敵である真柄覚念という僧と激しくいがみ合ったとされる。ある時、岩場の上で酒宴を催した真柄覚念は、すきを見て東尋坊を断崖絶壁から突き落とした。天候はにわかに崩れ、雷と暴風雨が四十九日続いたそうな。毎年命日にあたる四月五日は、東尋坊の怨霊が大波と化し、岩壁を激しく打ち殴り続けたとか。
この岩壁が「東尋坊」と呼ばれることになった由縁に、こんなにもはかなく切ない無骨な男の悲恋物語があったという逸話を、福井県民も以外と知らないはず。
絶景に心打たれ、海面を遊覧船で滑り、美味しい海の幸に舌鼓を打ち、買物に興じる、そんな自由で平和な現代人の姿を、いにしえ人東尋坊は「俺もこの時代に生まれていれば・・・・」と、きっとボヤいていることでしょう。